昨日あった出来事を由希ちゃんに話すと、彼女は冷静に聞いてくれた。


『なるほどね。まあ、おかしいと思うところはあったけど、親同士もよく知っている間柄だし、大丈夫だと思ったんだけど……それであんた、どうするの?』


 どうすると訊かれて、まだ何も考えていないことを改めて思う。


「どうしよう」

『別れたい?』

 その問いにドキッとした。


 あのときは感情的になって離婚してほしいと言ったけど、今はそんな気になれないでいる。


「わからない……ただ、びっくりして……それに、ちょっと怖くて……だって、あんな……私も覚えていないような写真もたくさんあるんだよ」


 まだ混乱していて、話していると涙が出そうになった。

 そんな私に合わせてくれるように、由希ちゃんは落ち着いた口調でゆっくりと話す。


『そっか。確かに、そんなもの見つけたらショックだよね。それ以外には、何かされたりした?』

「それ以外って……?」

『例えばそうね。暴言を吐かれたり、監禁されたり、ベッドに縛りつけられたり、行為を強要されたり』


 聞いているうちに恥ずかしくなってきて慌てて否定した。


「ないない! そんなことないよ!」

 ふと、遥さんのものすごく上から目線な姿を思い出し、ぼそりと愚痴をこぼした。


「でも、バカって言われた」

『ふっ……!』


 由希ちゃんが電話の向こうで笑ったのを、私は聞き逃さなかった。