「何? はっきりして。もう隠したって無駄なんだから。どうせ、うちの両親にもすぐにバレて……」
いきなり腕をつかまれて、じろりと睨みつけられた。
「は、放し……て」
急に怖くなって声が震えた。
「いろは」
顔を近づけられて名前を呼ばれると、ぞくりとした感覚が体中に走った。
それは恐怖だけじゃなくて、何か別の感情もある。だけどそれは無理やり蓋をした。
「やだっ……この詐欺師! 触らないで!」
必死に抵抗してみる、けど。
つかまれた腕はびくともしない。
「いろは!」
顔の近くで強く名前を呼ばれてびくっと震え上がった。
恐る恐る彼の目を見ると、かなり怒っているような雰囲気だった。
「な、に……?」
震えながら疑問を口にすると、彼は強い口調で言った。
「わからないなら、わからせてやる」
「えっ……」
遥さんはいきなり私を抱き上げて、書斎に入った。
恐怖のあまり彼の肩を何度も叩いて抵抗した。
「やだやだっ! 放して! 誰かーっ!」
「暴れるな」
「いやーっ! 襲われるーっ!」
「ああ、そうだ」
「ふえっ!?」
遥さんは書斎にある簡易ベッドに私を下ろした。
それから彼はネクタイを外してシャツの襟元のボタンを外した。
どくんどくんどくん、と私の鼓動が警笛を鳴らすように響いていた。
