とにかく、私が家族を守らなきゃいけない。
父と母を酷い目に遭わせるようなことになってはいけない。
混乱しつつも妙な正義感に満ちあふれている。
逃げちゃ駄目だ。
立ち向かうんだ、いろは!
「うちに何の恨みがあるのか知らないけど、正体を隠してママに近づいて、巧みにお見合いを見繕って、まんまと私を嫁にして、どんな復讐を企ているのか知らないけど、パパとママにだけは絶対に手出しなんてさせない! 恨みがあるなら今ここで私に話して。いくらでも受けて立つわ!」
もはや、正常な思考などなかった。
自分が何を言っているのかもよくわかっていない。
だけど、不安と恐怖の緊張感にまみれた状態で、私は必死に訴えた。
遥さんは表情を変えることもなく、冷めた目で私を見下ろしている。
そんな顔をして私を威圧しても絶対に負けない。
私がじっと睨みつけていると、彼は「はあ……」と小さなため息をもらして言った。
「深読みしすぎ」
「ふ、かよみ……?」
体に力を入れ過ぎているせいか、声が上ずってしまう。
遥さんは私から少し離れて、目をそらしながら腕組みをした。
距離が取れたことで少しばかり体の力が抜けた。
