「この前も体調が優れないようだったけど、あまりにも続くようなら病院へ行って診てもらったほうがいいかもね」

「そうですね。でも、大丈夫です。えっと、この前は具合が悪かったわけではないので……」

 ただ、キスうんぬんのことで悩んでいました、なとどは言えない。


「何か悩みでもあるの? 学校で何か嫌なことされたとか?」

「えっ? いいえ、そんなことないです」

「そう。じゃあ……」

 長門先生は私にずいっと近づいて、なぜか笑みを浮かべた。


「家で何かあるのかな?」


 ドキッとして言葉を失った。

 なんだろう。心配してくれているはずなのに、妙に冷めたような口調だと思うのは気のせいだろうか。


「何も、ないですよ」

「そうか。秋月さんは彼氏いるの?」

「へ!?」


 なぜ先生がそんなことを訊くんだろう?


「ああ、別に深い意味はないんだ。最近、彼氏と夜中に長電話しすぎて寝不足になる子もいるからさ」

「……そう、ですか」

「ほどほどにしないと、勉学に支障がでるよって、いつも忠告してるんだけどね」


 まさか結婚していますなんて言えないし、どう答えたらいいか迷っていたら、先生は目を細めて口もとに笑みを浮かべて言った。


「秋月さんはそんなことないよね?」


 なんだろう、この威圧感。

 笑顔だし、優しそうに話すのに、やっぱりどこか冷たい印象を受ける。

 そして距離感がおかしい。

 近すぎる気がする。


「あの、先生……」