出会い

「きりーつ、礼」
「ありがとうございました」

変わりのない普段の号令。授業も終わり、あとは、帰るだけという時間。
私、近藤紫音は、早めに教室を出る。今日は、週に一度の塾の日、遅れるわけには、行かない。

「あの、近藤さん」
すると、教室を出る時に、クラスメイトに話しかけられた。
あ、この子確か、茉白菊ちゃんだったかな、学校でも有名な美少女だったっけ。
「何か用かな?」

できるだけ軽く言ってみる。
ただでさえ、私は、勉強ばっかりの変わり者なんて呼ばれているから、怖がられないようにしないとっ……!

「あの〜今日みんなでカラオケ行こないかって話してたんだけど、近藤さんも行く?」
何で、こんなに日が悪いの!そう、茉白さんが誘ってくれる日は、いつも何か用がある日ばかりなんだ。
「ごめんなさい。今日は、塾が……」
「ごめんね〜忙しいのに……また今度改めて誘うから!」

話している時に、言葉をさえぎって謝ってきた。
コレって、わざとだよね?
そう考えていると、茉白さんや、その取り巻きの子達がクスッと笑っているのが見えた。
それを見て、私は、一気に体温が下がったような気がした。
茉白さんは、時々こういった嫌がらせをしてくる時がある。用事がある日を誰かに聞いてこんな事をやっているんだろうな。

「いやー、菊ちゃんめっちゃ優しいわぁー」
「ほんとだよ、わざわざガリ勉まで誘ってあげるなんてさ!」
「ほらガリ勉頭下げて感謝しろよな」

周りの男子が、茉白さんのことを、褒めあげる。こんなことももう慣れっこ、こんな時は、いつも、私は、敵。

「ごめんなさい、もう用事迫ってるから。」
「あ、ごめんねぇ〜こんなに引き止めて。また明日ね」
「うんまた明日。」

私は、逃げるように廊下を急いだ。後ろから、私の陰口が迫ってくるのを感じながら。

学校の校門を出て、少し先の堤防台のところまで来た時、毎日我慢していた涙が私の視界を埋めつくした。
悔しかった、辛かった、私だって、普通に友達と遊んだり話したりしたいのにな。

そんなことを考えていると、今たっている斜め左下の川辺で言い争いが始まっていた。男の子一人と、その子より少し図体の大きい男の子数人。その集団は、あの髙葉原中の制服だった。

髙葉原中とは、今県内でも有名な不良校だ。この街、桜井市では、その不良校髙葉原中と、学力テスト、全国トップ3に毎回はいると、有名なわたしの通う学校、白百合中がある。だからか、よく帰り道で髙葉原中の喧嘩は、小さい頃から見慣れていた。通りすがる通行人も気にもとめない様子で歩いていった。

もちろん私もそうしようと思った。だが、男の子が1人周りのヤツらにボッコボコにされているのが視界に入った。その子が口から血を流そうとも周りの男子は、なぐったり蹴ったり。私は、そんな彼らを見て思わず走ってしまっていた。

この辺で育ったため、父には、
「自分で自分の身は、守ること。誰か大変な人がいたら助けること。」
と教えられてきた。そのため武道は、だいたい習ってきていた。こんな時が本当にあるなんてっ……お父さんありがとう
男の子の前に着くと、私は、彼を守るようにして、彼と、男子たちの間に入る。
「こんなに怪我させたらダメです!」
はっきり私が言うと、向こうは、大きな声で笑うだけだった。でも私は諦めきれなかった。
「ねぇっ、聞いてるのッ!」
相手の肩を掴み無理やり振り返らせようとすると、話している途中に背負い投げをされた!その痛さに思わず息が詰まる。
目を開けると、男子たちは、まだわたしに攻撃しようとかまえていた。

私は、痛む背中を我慢して、また立ち上がった。うぅなんでこんなことに……。
もう一度立ち上がろうとする私に苛立ったのかすると、目の前に影がよぎったんだ。
前を見ると前を見ると、私がかばっていた彼が、目の前に来て男子達が降りおらろそうとしていた拳をやすやすと受け止めていた!