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「……よし。ここだ…」
階段を昇りきった俺は、息を切らし、辺りを見回した。
頬と腕にあたる風は肌寒い。
ここは船の最上階のデッキ。
辺りは日が沈んですっかり暗く、甲板の上には人影も無かった。
「誰も居ねぇじゃねーか。
本当にこの場所であってんのかよ?」
後ろでそう吠えるのは、いつでもカルシウム不足な(俺が勝手にそう思っている)幼馴染。
「ああ。
俺の冴え渡る推理が正しければここに間違いない。
このフロアのどこかに、この紙に書かれている場所がある筈!」
拳を握りしめて高らかに告げると、アカツキは潮風の冷気にまさる冷めた視線をよこしてきた。
「……どこか、ってどこなんだよ?」
「………」
的確に痛いとこをついてきた突っ込みに、俺は握り締めていた拳を力なく下ろした。
「……いやぁ。そこまではちょっと……」
そう言って、作り笑いを浮かべて誤魔化そうとするものの…。
「…………」
目の前の容赦なく鋭利な視線からは逃れられない。
しかし、やがてアカツキはふいっと俺から視線を外した。
「……フロアのどこかって言われても」
腕を組んだ姿勢のまま、周囲を見回す。
ここからだと船尾と船首は遥か彼方に見える。
「………めちゃくちゃ広いんだけど、ここ…」
静かでだだっ広いデッキの上を、びゅうと冷たい潮風が吹き抜けた。

