にぃっと口角を上げるその笑みは、育ちの良いお嬢様のものには到底見えなかった。
「――あなた…」
警戒するように、星羅は身を引いた。
「そうよ。
私はこのお嬢様の身体を借りただけの別の人間。
くだらない勝負を通じて、あなたが私のゲームの駒となりえるか見極めさせてもらっただけ」
その愉悦に細める目は獲物を前にした獣のようで、星羅をぞっとさせた。
「――こんな盤上の勝負なんかに興味は無い。
だって本当のゲームはもっともっと大きな盤上で始まろうとしているんだから」
そう言うとおもむろに立ち上がり、両手を広げて天を仰ぎ見た。
「――眠る者は目覚め、運命は引き寄せられ、崩壊は始まる」
高らかにそう告げると、星羅を見下ろして笑い始めた。
「あはははは…。
あなたもきっと”それ”を目にすることになると思うわ……あはははは…」
しかし続いていた哄笑は唐突に止まった。
スイッチが入れ変わったように目の光は正常なものに戻り、彼女はぷつりと糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。
まるで彼女に乗り移っていた何かが、急に消えたように――。
――ダンッッ…
彼女の身体が崩れ落ち、テーブルに突っ伏した衝撃で、盤上の駒は散らばり転がり落ちていく。
その一連の異常な事態を目にした星羅は、目を瞠ったままその場に動けずにいた。
「……一体、何が……」
唇をわななかせ、誰にともなく呟く。
「…一体、何が始まろうとしているというの…?」
答えられる者は誰も居なかった。

