Fortunate Link―ツキの守り手―



「ふふ。随分と私のことを下調べしているようだけど、残念ね。それぐらいじゃ、何の揺さぶりにもならないわよ」


「さすが強いのね」


「私のほうはいいとして、自分の足元はちゃんと見えているの?」


含んだ笑みとともに問いかける。


椎菜は盤上を見つめ、思わず息を呑んだ。
いつの間にやら劣勢。


「じゃないと、足元をすくわれるわよ?」


「……あなた」


震える手で、白の駒を動かす。


「恐ろしく強いのね」


「お世辞は要らないわ。
どうせ起死回生の一手を狙っているのでしょう」


「こんな状況で、そんなのとても思い付かないわ」


ゲームは進んでいく。

終盤へと。


そして、コトンと星羅は最後の一手を差した。


「チェックメイト」


白のキングは行き場を失った。

もうどこにも動けない。



「――つまらないゲームだったわね…」


勝者は溜息とともに呟いた。


「私、今日のあなたの一戦を楽しみにしていたのに…。
とんだ藁を掴まされた気分よ」


「それは悪かったわ」


「あなたは終盤に相手の思いもつかない手を繰り出して、翻弄する魔女みたいな戦い手だと噂に聞いていたのだけれど。

何なのかしら、この茶番みたいなゲームは。
まるでこう来たらこう返すとプログラムされた機械を相手にしてるみたいだったわ」


星羅のその声には微かな怒りさえも混じっていた。


「――あなた本当に、栗原椎菜なの?」


唐突にそう問い掛けられ、椎菜はふっと目を細めた。


「…面白いことを言うのね。
私じゃなければ私以外の一体誰だと言うのかしら?」


「……上手く言えないけど。
あなたはあなたじゃない、そんな気がするの」


星羅はそう答え、睨み据えるように目の前に座る相手をじっと見つめた。


無言の沈黙が続く。

椎菜は意味深な笑みを浮かべたまま。


そしてやがて、口を開いた。


「――そう。
さすがは無敗の勝負師…。
相手の見極めも的確ね」