しかし星羅は盤上から視線を動かさず、静かに黒の駒を動かす。
「あなたが勝ちにこだわり続けるのは、そうしないと誰にも自分を認めてもらえないと思ってるから。
違うかしら?」
椎菜も駒を動かし、相手のポーンを取った。
「……そうやって私に精神的な揺さぶりをかけようっていう戦法なの?」
星羅はちらりと視線を動かし、問いかけた。
「戦法も何も、今言ったことは事実だと確信しているのだけれど?」
目を細めて答える椎菜。
「噂に聞いたのだけれど、あなたのお父様、新しい養子か養女を迎え入れようとしているんですってね。
そうしたら、白石家にあなたの居場所なんてあるのかしらね?」
椎菜は駒を動かす。
白のナイトが黒のキングに迫る。
星羅は表情を変えずに、駒の配置を眺めていた。
「……居場所、ねぇ」
息を吐きながら、黒の駒を動かす。
「そんなの、はなから持ち合わせちゃいないわよ」
「…へぇ?そうなんだ」
「ええ。だって期待するだけ無駄でしょう?」
星羅は顔を上げ、そう言った。
その表情には歪んだ笑みが浮かんでいた。

