「なぁ、シュン。
あいつらスーツ姿だったよな?」
「そういえばそうだったな」
「ってことはパーティーに出席してるのかもしれねぇ」
なるほど。
アカツキにしては珍しく冷静な読みをしている。
「てめぇ。
今、失礼なことを思ったな」
「…よし!パーティー会場へ戻るぞ」
不穏な空気を察した俺は話をぶった切り、そそくさと足を動かした。
階段を降り、客室の並ぶ廊下を抜け、また階段を降り、劇場や映画館の前を通り、少し階段を上がり…。
「ってまた同じ場所に戻ってきてんじゃねぇか!」
いつの間にか、ついさっき来たばかりの廊下に戻ってきていた。
気の短いアカツキがさっそく後ろで憤っている。
「あれ?おかしいな。
かつて青木ヶ原樹海すら抜け出せたことのある俺の脳内全方向測位網が、間違いなくこの場所を差し示していたんだが…」
「もういい。お前には頼らん。こっちだ」
アカツキが走り出す。
「ちょっと待てって」
アカツキの後を追い、走る。
階段を降り、よく分からないクラブやバーの店の前を通り、階段を降り、レストラン等の店の前を抜け、階段を上がり…。
「って、また同じ場所に戻ってきてんじゃねぇか!」
またも、さっき来た廊下に戻ってきていた。
アカツキは再び憤り、俺の胸倉を掴んできた。

