Fortunate Link―ツキの守り手―




「……それより君達は誰なんだ?なぜここに居る?」


白石さんのお父さんは全てを一瞬にして忘れたかのように、目の前の男二人に問い掛ける。

俺達は「何が起きたんだ?」と互いに顔を見合わせた。
アカツキもまた首を傾げている。


(……一瞬にして全てを忘れるとは……)


…まるで誰かによって、記憶を消されたみたいではないか…。


「知らんのなら、おっけーや」


関西弁男は満足げに笑い、もう一人の男へ声を掛ける。


「さて仕事は終わった。帰るで。翆」

「そうだな」


男二人は立ち上がり、扉の方へ歩いていく。


「……おい。君達は……」

「……ほなさいなら。お邪魔しました」

何が何だか分かっていない様子の部屋の主に軽く手を振り、部屋を去っていく。


隣でずっとじっとしていたアカツキが俺の方を見た。

「シュン、あいつら…」

「分かってる。追いかけるぞ」

アカツキの言わんとしているところを表情だけで理解した俺は、デスクの下から抜け出した。


「……わっ。…なんだ君達まで…」

突然現れた俺達に驚く白石さんのお父さんに、しかし構っている暇などない。


「すんません。
失礼しました!」

それよりあの男二人を追いかけねば。

部屋を出て、廊下の外へと出る。


……しかし、そこには…。

「……居ない」

あの男二人の姿はなかった。


「なぁ。シュン。あいつらって…」

「そうだな。アカツキのことを話していたし限りなく怪しい。
もしかしてあの犯行予告文の送り主かもしれない」

同じことを思っていたアカツキは大きく頷く。

「まだ近くに居るかもしれねぇ。捜すぞ」

「そうだな」

船内の廊下は走ってはいけないが、今だけはちょっと走らせてもらう。

しかしいくら付近の廊下を辿れど、あの男達の姿は見つからない。