ぞろぞろと部屋に誰かが入って来た。
壁に映る人影から察するに、どうやら男三人のようだった。
そうっと机の下からちょっとだけ顔を出し、部屋の様子を窺う。
「そこに掛けたまえ」
大柄な男が赤い肘掛けの椅子に掛け、二人の男にソファーをすすめた。
(…っていうか、あの大柄な男…)
「パーティーに出なくてええんか?主催者やろ。あんた」
ソファーに座る二人の男の片方が、横柄な関西弁で大柄な男へ訊く。
声から察するに結構若い男のようだった。
後ろ姿しか見えないが、派手なオレンジ色の頭をしていた。
「始まりの挨拶さえ済ませれば、私にやることなんてほとんどないさ」
大柄な男はゆったりとした低音でこたえる。
(……そうだ。この人は…)
「ほう。お宅のお嬢様の勝負は見届けんでええんかいな」
「別に興味は無い。
彼女は彼女の役割を果たしてくれたらいいだけのことだ」
そう冷たく答えるこの男は――。
(……白石さんのお父さん!)
確かめなくてもはっきりそうだと分かった。
「ふぅん。
もう”そのおもちゃ”には飽きたんかいな」
すると白石さんのお父さんは「ふふっ」と笑みを漏らした。
「新しい宝石が見つかったんでね」
「……なるほど。それは月村明月のことかな」
ずっと黙っていたもう一人の男が口を開く。
こちらもオレンジ頭の関西弁男と同年代と思われるぐらい若いようだった。
自分の名前を呼ばれたことに、アカツキが反応し、体を動かす。
案の定、デスクの引き出しに頭がつかえ、少し音をたててしまった。
「……なんか。今、音がしなかったか?」
「そうか?」
「下の厨房からネズミでも上がってきてんのとちゃう?」
「そんなわけなかろう」
この船の所有者でもある白石さんのお父さんが一蹴した。
どうやら三人ともこちらには気付いていない様子だ。
俺はほっと胸をなでおろした。

