「……なぁ」
今までじっと黙っていたアカツキが口を開いた。
「さっきお前、私に何か聞いてきてたけど」
アカツキは予告状のを指差す。
その最初の行の文字を指でなぞった。
『月に告ぐ』と書かれている部分だ。
「…その予告状…、もしかして私宛てじゃないのか?」
「……えっ」
白石さんは少し動揺した顔を見せた。
「この、月ていうのは、私のことを示してんじゃねぇのか?
だからお前もさっき私に聞いてきたんだろ?」
「…ちょっとは思ったりしたけど、単なる思い付きよ…」
「……本当か?」
そう言ってアカツキは予告状の紙を掴んだ。
「…だったら、これはどういうことだ?」
その紙を裏返して、俺達に見せつけた。
そこには、福引きセールの文字がでかでかと書かれていた。
「……おい。それって…」
アカツキがこの客船のクルージングの招待券を当てたと言う、例の…。
「見ての通り、商店街の福引きセールのチラシの裏紙を使ったみたいだな」
アカツキはそれを机に叩きつけるように置いた。
「要するに。
これを送りつけてきた相手は、どうやら私に用があるらしい」
「……月村さん」
「てめぇが出る幕でもねぇよ。
こんなちゃっちなチラシの裏紙を使ってくるようなふざけた相手だ。
どうせこの爆破なんてのも嘘で、私を呼びだそうとしているだけのように見える」
「……でもっ…。
そんな簡単にそうとは決めつけられないわ」
「てめぇの意見なんてどうでもいい。
私はこいつを必ず見つけ出して、ぶちのめす。ただそれだけだ」
アカツキはいつものように強気で粗暴な口調で言い放った。
だけど、なぜかそれを否定する気にはなれなかった。
「だからそんな簡単な話じゃ…」
「――白石さん」
俺は、言い返そうとしていた彼女の言葉を止めた。

