「皆に挨拶は済ませたのか?」
「今から廻るとこよ」
そう答える白石さんは、どことなくいつもより強張っているのように見えた。
白石さんのお父さんの目が、ふと俺とアカツキの方へ向く。
「そちらの方々は?」
「私の学校の友人よ」
その言葉にアカツキがすごく何か言いたげだったが、この場の雰囲気を読んで耐えたようだ。
「そうか。
……それはそれは。
娘がいつもお世話になってるね」
ころりと表情を変え、微笑みかけてくる。
俺達も軽く会釈を返した。
(……この人が白石さんのお父さんか)
笑みを浮かべるその人を見て、思った。
分厚い唇。垂れ目がちな目もと。皺の多い頬。それらすべては完璧に笑みを形作っているけど…。
(貼り付けた笑顔とはこういうものをいうんだろうな)
なんとなく薄気味悪いものを感じつつ思った。
「君達もゆっくりパーティーを楽しんでいってくれたまえ。
星羅、私はそろそろ行くよ。
招待客の方々への挨拶がまた済んでないからね」
「ええ、分かったわ。
それでは、またあとで」
そうして、白石さんのお父さんは俺達の前から去って行った。
「……ふぅん。
あの人がお前の父親?」
姿が見えなくなってから、アカツキは白石さんに訊ねた。
「そうよ。
…何か言いたげだけど、どうしたの?」
「……なんか…全然似てねぇなと思って」
アカツキは率直にそう言った。
失礼かもしれないが、実はそれは俺も同感だった。
顔もそうだが、醸し出てる雰囲気もまるで違う。
(……やっぱり、…あの話は本当だったということなのか)
思い出すのは、今日、プールサイドで聞いた、白石さんのあの言葉。
『――私はね、養女として今の家に迎え入れられたの』
白石さんはそう話していた。

