「……んな…」
……滅茶苦茶な。
しかし、彼女の言う通り、アカツキに両親や身近な親戚が居ないのは事実だった。
そこまで調べ上げているとなると、相手の本気さが窺い知れる。
「……でも本気か?
……白石さんが居るのに、さらに養女だなんて…」
すると白石さんは少し頼りなげに笑った。
「そうね。
月村さんがうちに迎え入れられるとなれば、私はもう用済みね」
「……そんな」
「だって社交の場で、賭博を催させて娘を見世物にするような親よ?
私なんて、最初から道具としてしか見られてないことぐらい分かっているわ」
「……白石さん」
まるで突飛な内容の話だが、彼女が嘘を言っているようには見えなかった。
外は陽気な音楽が流れているというのに、ここを流れる空気だけが重い。
けれど俺達はその時、もう一人の物騒な存在を忘れていた。
「――何しんきくせぇツラつき合わせて話してんだ」
重い空気を破ったのは、やはりそいつだった。
パラソルの下に入って来たそいつは、どっさりフルーツが盛ってあるボールをどんとテーブルの真ん中に置いた。
「……なんだこれ」
「店の前で言い寄って来る男どもを脅……じゃなくて、普通に買ってきただけだ」
……絶対、普通に買ってきてないだろ、こいつ。
「わー。おいしそう!」
白石さんが目を輝かせて歓声を上げる。
「食べていいの?」
「別に構わん」
愛想なく答えるアカツキに対し、白石さんは「やったー」と喜ぶ。
どうやらいつもの白石さんだ。
その様子を確認して、俺は少しだけほっとした。

