怒鳴り出したくなる気持ちを押さえて、電話に出る。
「―――もしもし」
すると聞き覚えのある声が耳に届いた。
『もしもしー?久しぶりね。母さんよ。留守中元気にしてた?』
ムカつくほど楽しそうな声が響いた。
その声は、日暮夕月でもなく、冴月さんでもなく、今まで俺を育ててくれた母さん――守谷香織(モリタニカオリ)のものだった。
何だかんだで、やはりこの声が一番安心する。
しかし…、
「元気にしてたもあるか。どーいうことだこりゃ」
声を聞くなり、我慢しきれずに訊いた。
『え?どーいうことって。言うまでもないでしょ?あんたの荷物を全部アカツキちゃん家にまとめて送りつけただけよ』
わざとなのか、さらっと流す。
「だからーそれがどういうことかって訊いてんの!」
『だって、来週からホームステイする留学生をうちに受け入れるんだもの。あんたの部屋を使ってもらうつもりなの。帰ってこないでね』
「はぁ?留学生?」
『うん。フランス人の大学生よ。23歳の美人な女の子!』
「知るかよ…」
『そういう訳だから、あんたが戻ってきても家に居場所なんてないから。そこでアカツキちゃんと仲良く暮らしなさい』
「めちゃくちゃじゃねーか。何考えてんだ」
『あら。母さんはちゃーんと考えてるわよ。よく考えてもみなさい。そこに居れば労せずアカツキちゃんをずっと見守ることが出来るわよ。24時間ばっちり守れるわ。セコムより安心よ』
「いい加減にしろ。この馬鹿親」
ついにキレた。
これでキレずにはいられますか。
『親に向かって馬鹿とは何ですか。そんな口の悪い息子に育てた覚えはありません』
「息子に連絡なく勝手ばかりする親に言われたかぁない」
あー。こめかみの痙攣が止まらない。

