白石さんはビシッとその人差し指を向け、ウインクした。
「――宣戦布告」
アカツキに向けてはっきりとそう告げた。
「考えてみれば、私ちょっと弱気になっちゃってたわ。
いつもシュンと一緒に居るあなたには勝てない、って無意識の内に思い込んでた。戦う前から諦めてた。
戦わずして諦めるなんてホント馬鹿げてるわよね」
そして放心している俺の方を見て、楽しそうにほほ笑んだ。
「でももう怖いものなんて無い。私は勝てない勝負なんてしないもん。
――最後に勝つのは絶対に私だから」
言って、落としていた紙袋を拾い上げた。
「じゃあ、またね」
何も言葉を返せない俺達に手を振った。
一体どこから湧いてくるのか、その表情は自信で満ち溢れている。
しっかりとした足取りで去っていく。
こちらはただ呆然とその姿を見送るばかりだった。
しばらくその余韻から抜け切れず、俺は抜け殻状態でその場に居た。
何も考えられない。
ちょっと前のシアワセ気分は見事に吹っ飛んだ。
柔らかなイイ感じの空気の前で、予告なしに爆竹を鳴らされたようなものだ。
数分前まで、あらゆるものが自分の味方のように思えていたのは嘘のよう。まるで一炊の夢。
現実とはやっぱり不条理で厳しい。
横を見ると、アカツキも同じように完全に立ち尽くしている。
なんか取り巻いているオーラが恐ろしくて声が掛けられない。
「――シュン」
とか思ってたら、呼んできた。
「……何だ?」
若干警戒しながら、そっと窺い見る。
すると目にも止まらぬ速さでその腕が伸びてきた。
「……おぶっ」
襟を掴まれ、体ごと後ろの塀にガンッと思いっきり押しつけられた。
「許さない」
すぐ耳元でそんな声が聞こえた。
今にも殴られそうな空気だ。
身を固くする。
めちゃくちゃ近い。近すぎる。
ってか近づいてる…?!
そう察した瞬間に、唇に柔らかな感触が重なった。

