翠はやはり見た目何を考えているのか分からない顔つきで蓮を眺めていた。
だが、おもむろに先ほど受け取ったばかりの紙袋から何かを取り出すと、蓮の方へ歩み寄って差し出した。
「餞別だ」
素っ気無い口調で言い、渡す。
受け取った蓮は、ほけっと翠を見た。
だけどすぐに笑みを取り戻す。
「ありがとな」
その白い封筒を軽く挙げ、率直に礼を言った。
そして嬉しそうに訊く。
「お土産は何がええ?ビールか?酒か?マトリョーシカ?」
「どれもいらん」
翠は無表情のまま答える。
「じゃあお前にそっくりなマトリョーシカがあったら買ってくるわ」
人の話など聞かない。
ただすがすがしいほどの笑顔を浮かべている。
翠はそれ以上何も言わずにその場に立ち続けて見送った。
蓮は意気揚々とその場を後にした。

