アカツキを抱いたまま、突き出した岩の先端に掴まり、押し流されそうになるのを必死で耐えた。
しかし、水の高さはあっという間に腹の上を越してくる。
このままだと一分と持たずに呑み込まれてしまう…。
全てを呑み込んで…。
もしかして――、とわずかに残ってる頭の冷静な部分を働かせて考える。
あの男が言ってた通り、この場所がアカツキの作り出した”歪み”に相当する場所なのだとしたら…。
『――いずれ歪みなど容易く呑み込むだろう』
『――即ち、歪みもろとも月村明月は消える』
それは――、
この場所の崩壊により、その中に居る俺達ごと消える――という意味なのでは。
そう考え到って、
「………冗談じゃない」
呟く。
誰の助けも無いこの場で、一人っきりの自らを奮い立たせるように。
せっかく見つけ出したのに。
ここで無くすわけにはいかない…。
こんなところで奪われてたまるかってんだ。
たとえどうしようもないぐらい絶望的な状況であっても……。
諦めるわけにはいかない。
諦めたら、本当にこの場で全てが水の泡となって消えてしまうから。
絶対に――。
しかし、水位はすでに肩ほどまで達していた。
それでも辺りを見ずに、抱えているアカツキの顔を見ていた。
周りがこんな状況にあっても一向に目を醒ます気配は無い。
そしてもうじきに水に包まれてしまう。
意識の無いままに水中に入るのはまずい。
素早く判断する。
(……だったら、どうすれば…)
逡巡したのは瞬きの間だけだった。
戸惑ってる暇も無い。
どうしようもない状況であっても、どうにかする――それだけだった。
水の勢いがすぐそこまで迫る。
深く考えるまでも無く、そっと顔を近づける。
もう迷わなかった。
密着させるように強くアカツキの体を引き寄せる。
躊躇い無く。
その唇に唇を重ね合わせる。
隙間から、ゆっくりと深く、息を送り込む。
そこから温かな息が微かに返されてくるのを感じた。

