Fortunate Link―ツキの守り手―



右手に力を込める。

刀身が淡白く煌く。

その表面に溝が走る。

紋様のようなそれが歪に浮かび上がった。

溝の上をイメージした流れが走っていく。


「――受け取れ」

左腕を動かさないまま耐えて、


右腕で刀を振るう。

紫電一閃。


刀身の周囲の空気が溝を走る流れによって乱されていく。

乱れ合った空気の流れが渦巻き、重なり、膨らんでいく。


そして――放ち撃つ。

逆巻く烈風を相手に食らわせる。


理屈は分からないが、なぜか俺は”その方法”を知っていた。



「――俺の覚悟を」






ズゴォォォォッ


凄まじい轟音とともに、周囲を光が包んだ。

泥と雨滴が辺りを舞った。


淡い緑の燐光が散る。

全てを飲み込む風。


渦巻き、立ち昇り、駆け巡り。

地を、雨を、空気を、蹂躙して…


そして一瞬にして去っていく。

瞬く間に光も去っていく。


全てを出し尽くしたせいで、体中の力が抜けていくのを感じる。


静寂が戻る。


対峙していた相手の姿は、前方には無かった。

視線を巡らせる。


……居た。

公園の隅の植木辺りまで飛ばされていた。



俺はゆっくりとそちらへ近づいていった。

ダラリ、とぶら下がった左腕が重い。

体をなるべく揺さぶらないようにゆっくりゆっくり歩く。


恐る恐る、まだ警戒を解かないまま、覗く。

仰向けになってるそいつを。


「………うぐっ」

呻きながら、目を開けた。


開いた目を覗き込んでいる俺を捉える。

奴は力なく笑った。

「無様に負けてしもたなぁ、これ」

起き上がらないままに云う。

変な奴だ。本当は起き上がれるくせに。

「とどめ刺しておいたほうがええと思うで。今のうちに」

無防備さをさらしながら、そんなことを言う。

「……倒せただけで十分だよ」

手を差し出す。

さっさと起き上がれ、という意味を込めて。


だが瀬川はその手を取らなかった。


「はよ行けや。アカツキちゃんのところへ」