Fortunate Link―ツキの守り手―




ビュッッッッッ


完璧に見切った筈のその突きは肩の表面を掠っていった。

横薙ぎに一閃した刀は、コンマ数秒遅れて不完全にその一撃を弾く。


(……っ……まただ…)

また棒身が伸びて、間合いが変わった。

再び下がることを余儀なくされる。

退く俺に、瀬川はさらに踏み込んで追いすがってくる。


飛び込む勢いを乗せた、上から直下に振り下ろされる攻撃。

その昔なら兜をも叩き割りそうなぐらい、気持ちのいいほどの唐竹割り。

ただし今の俺の状況からは全く気持ちよくない。


上体を後ろへ反り、避ける。

――はずが、またも腹を掠めていった。

(………なぜ…)

一瞬に思考を巡らせる。


繰り出される十手に意識を注ぐ。

集中して捉える。

時間が引き延ばされたように、その動きがゆっくりと見えた。

棒先からその持ち手までの距離が…


(………そうか)


今度は反対側の脇腹を少しえぐられた。

内臓に衝撃が加えられ、その痛みに膝をつく。


「はっ。ええ格好やなぁ、シュン」

瀬川は突いた十手を横へと切り返した。

「やっぱりお前はここで終わりや」


水平に繰り出される。

終わりにすべく。





「――終わらない」


俺は片足で地面を蹴った。



高く高く飛び上がり、宙を舞い上がった。

体はどこまでも軽い。


刀を持ってないほうの腕を振り上げる。

狙うは――、



鈍い音が鳴り響いた。

太い枝が軋んで折れたような音。

全身を突き抜ける衝撃に、顔を顰めた。


瀬川の顔は驚愕で彩られていた。

十手の鉤に、俺の左腕ががっちりと引っ掛っていた。


この鉤のせいだ。

こいつが棒身上を前後に移動してたせいで、十手のリーチの長さを誤認させられ、間合いが測れなかったのだ。

そして間合いは測れない以上、繰り出される前に攻撃を封じるしかない。


腕一本が犠牲になったが、それは果たせた。

左腕を引っ掛けた十手は一瞬その動きを止めた。


激痛の走る腕からは意識を遮断する。

全身を巡る流れを意識する。

心はどこまでも澄みわたり静かで。

全ての流れが視える。