彼女はどこまでも超然と佇んでいた。
揺るぎのない態度で。
俺の真正面に立って。
俺達以外に誰も居ない、この場所で。
この全ての真ん中で。
遮るものの無い、この真っ白な世界の真ん中で。
俺の、心のど真ん中で。
全てを悟りきってる表情で艶然と微笑んで、
『…さぁ。おぬしの意思で選びとるが良い』
その真っ白な手を差し出してくる。
道を指し示して、選択を突きつけてくる。
『力を貸した分の代償は必ず頂く』
俺の気持ちを試すように。
或いは確かめるように…。
『…それでも、進むべき道があるのなら、迷うことなき意志があるのなら――この手を取るがいい』
俺は差し伸べられた手を、じっと眺めた。
その色に魅入られるように。
白い。
透けそうなぐらいに白い。
吸い込まれそうな純白だった。
心を投影する白。
映し出す、白。
(………アカツキ)
面影がゆっくり浮かび上がる。
とてもくっきりと浮かび上がった。
あいつは俺を待っていてくれるのだろうか…。
こんな俺を待っていてくれるだろうか。
その答えは分からない。
あいつの気持ちをまだ一度も確かめてないんだ。
だから俺はちょっと恐れていたのかもしれない。
自分の気持ちがあいつに近づけば近づいていくほどに。
知るのが少し、怖くなる。
……だけど。
今は違った。
今は知りたかった。
今の俺はたまらなくそれを知りたかった。
(……あいつは……俺のことを…)
――どう思ってくれてるんだろう。
過激な暴力と、口悪く罵ってくる、その裏で。
あいつは何を想っているんだろう。
時折見せる、あの不安そうな表情の意味は…
戸惑ったように視線をそらす理由は…
いつかの、あの、一方的にしてきたキスの真意は…
言いたそうで言わなかったあの言葉は本当は何だったのか。

