突如、声が響いた。
深く深く響き渡る澄んだ声。
不思議な力のこもった声だった。
静かな湖面に落ちた一雫のような。
ゆっくりとゆっくりと波紋を広げて。
(――――誰?)
何となく疑問に思った。
沈んでいた意識が浮き上がる。
ゆらゆらと揺れる意識がゆっくりと浮上していく。
誰だろう。
耳にひどく心地良い声だ。
……いつか、どこかで。
聞き覚えのあるような…。
『――お前は何がしたい?』
(……何が……したい…)
ぼんやりと思考を巡らせる。
俺は何がしたいんだろう。
何がしたかったんだろう。
けれど深く考えるまでもなく、するりと自然に口から答えが出てきた。
「……アカツキに……会いに行く…」
ああ。そうだ。
そうだった。
当たり前のように。
決まっていた。
答えはすごく簡潔で。
言葉に出してみると、何だかやれそうな気がした。
『……そうか』
満足そうに笑う声。
『お前なら出来るさ』
「……えっ?!」
目の前に誰かが立っていた。
和服を着た男の人。
精悍な顔立ちのなかで、その目は凪いだ海のように静かな優しさに満ちていた。
その顔を見た途端、ああ、俺はこの人を知っていると分かった。
ほとんど知らないはずなのに。
遠い遠い記憶が知っていた。
「……父さん…」
すると、父さんは少し嬉しそうに微笑んだ。

