「うぉっ、
何か知らんが大丈夫か」
サトシがたじろいだように声を掛けてくる。
だが、俺はそんな反応も気にならないほど頭を抱えていた。
…ていうか、アイツ自身が”強運”に守られているのだとしたら、そもそも俺が守る意味ってあるのか…?
考えてたら虚しくなってきたのでやめた。
そんな俺の心中を知らないお気楽馬鹿はバシバシッと背中を強く叩いてきた。
……痛いっつーの。
「何?もしかして進路とか悩んでんの?
……早い早い。俺達まだ1年だぜ?」
勝手な憶測で物を言ってくる。
…まぁいいけど。そう思ってくれて。
ズシッ…。
前頭部に鈍い衝撃、と圧し掛かる重量感。
「朝から辛気臭ぇツラしてんじゃねぇよ」
前方からやってきたその女に、スポーツバッグをずしりと頭に載せられていた。
「何しやがんだ?!」
乗せられたバッグを払いのけながら、相手を睨む…。
「…………」
……いえ
とんでもございません。
正直睨めませんでした。
だってそいつは…
危ないほどに超目付きの悪い金髪女で、
恐ろしく強いことは全校生徒の折り紙付き。
眉毛の無いその切れ長の目で睨まれたらもう…、
蛇に睨まれた蛙どころかオタマジャクシみたいな心地で。
俺は恨めしげにそいつを見上げるにとどめた。
そんな彼女こそ、
『”ツキ”を持つ者』
――月村明月(ツキムラアカツキ)
俺が守るべき相手。
その人だった。

