Fortunate Link―ツキの守り手―




――ザァァァァァッ


断続的なノイズが耳の奥を揺らす。



何だろう。

冷たい。


意識だけがのろのろと覚醒した。

(……雨)

それから。

続けて何かを考えようとした途端に、

「……うっ」

それを妨げる疼痛が頭蓋を中心に響いた。


目蓋をゆるゆると持ち上げると、視界は赤かった。

頭が重すぎて顔を上げられない。

口の中がシャリシャリする。

土が入ったのか。


「ザマぁないなぁ。シュン」


遠くで笑う声が聞こえた。


ふと見ると、すぐ眼前に靴があった。

思ったより近くだ。


「この程度やとは笑わせる。

まぁ。こっちが不利をついたにしろ…」


雨音に混じっても、その声はやけにくっきりと耳に届いた。


「結局、これはお前の甘さが招いた結果や。

今までに俺を倒せる機会なんていくらでも有ったやろ。以前にやり合うた時に俺を完全に倒しておくべきやったんや。お前は…」


途端に、投げ出されていた手に衝撃が駆け巡った。

目を剥く。

足で容赦なく右手首を踏みつけられていた。


「……うぐあっ」


痛みに体が仰け反った。

泥濁しかけてた意識が一斉に目覚める。



「お前は甘くても、俺は甘くない…」



告げる瀬川の声は、この雨よりも冷え切っていた。


降り続く雨も容赦ない。

叩きつけるように激しく降り続く。

余すところなく体を冷やしていく。


「俺はなぁ、フツーやない。平気で笑いながらでも人を痛めつけられる」


ぐりぐりと足で手首を踏みにじってくる。

痛みでおかしくなりそうだったが、もはや声も出なかった。


「…そやけどまぁ。学校ってのはなかなか楽しい場所やったで…。

けど、俺にはやっぱり不相応な場所やったかな」


雨音が更に激しさを増す。

声が少しずつ雨にまぎれていく。


「楽しいねんけど、たまに人が恨めしくなる。呑気に生きてる奴が恨めしくなる。どうしようもなく壊したくなる。全て。破滅してしまえばいい。
もしかしたら俺は全てを憎んでるんかもしれん。自分のままならんこの世界の全てを」