相手は間合いの外。
勝手に距離を取ってくれてる。
奴がどういうつもりなのか分からないが、取りあえず今の内に体勢を整えないと。
息を吸って吐いて。
まずは呼吸の乱れを戻す。
腕は……動く。大丈夫。
手首はまだ突かれた時の痛みが残ってるけど。使えないことは無い。
よし。いける。
まだいける。
一気に片をつける。
こんなところで足踏みしてる暇は無い。
だから終わらせる。
決意を込めて、刀を腰だめに構える。
その目の前を大粒の雫が通り過ぎ、地面に染みを作った。
とうとう雨が降り始めたらしい。
やがて数を増やした雨粒が、染みを増やしていく。
ポツリ、と頬を濡らした雨粒が妙に心をせかした。
右足をにじるように一歩前へ進め、低く構える。
緊張を全身のすみずみまで行き渡らせる。
キリキリと張り詰めさせる。
例えるなら矢を番えて弓弦を引いた弓のように。
(………行く)
フッと息を吐くと同時、溜めていた力を一気に噴出させる。
踏み込んだ足をバネのように伸縮させ、一足飛びで距離をつめた。
懐に飛び込むなり、逆袈裟に一気に振り上げた。
上まで降り抜かず、水平で止める。
相手はそれを見極め、上体をそらして避けていた。
それでも攻撃はまだまだ止めない。
水平に保った刀身を一度の踏み込みと共に三度突く。
自己流の三段突き。
カンカンカン…。
だが驚くべき事に奴はその全てを正確に弾いて見せた。
しかも最後のは、弾くと同時に棒身を突き上げ、その鉤部分にこちらの刀を引っ掛けてきた。
クルリと、それを回転させてくる。
またも投げ飛ばしてくるつもりだ。
(………そうはさせるか)
その回転に合わせて、こちらも体を伸び上がらせた。

