俺は呼吸を整え、慎重に相手を窺った。
手加減をしない、ということは、弱点をついてくる、という意味とイコールだ。
そして戦う前から既にその弱点をしっかり握られてしまっていて。
だとすれば、こちらに分が悪すぎる。
普段使い慣れてる、手軽な暗器の方を用いるべきか……。
(………いや)
すぐさまその考えを打ち消す。
あの、見るからに威力の半端無さそうな奴の持つ武器に太刀打ちするには、やはり”コレ”しかない。
「……何や?掛かってこーへんのか?」
せっつくように言ってくる。
こちらは無言で返す。
掛かっていくも何もそっちが吹っかけてきたくせに…、と苛立ち混じりに思った。
相手が退いてくれれば、俺は喜んで戦わずしてこの場を去る。
そして学校へと戻り、奴の言うアカツキの居場所へ一目散へ向かう。
俺はこいつのことは信用していない。
だが、さっき言った事は嘘ではない、と感じていた。
なぜだかよく分からないけど、アカツキがその場所に居るはずだ、と確信に近く思っていた。
理屈じゃない。
第六感だか直感だか勘だかがそう強く訴えかけている。
だから俺はその場所へ行く。
(……だけど)
絶対に、そうは行かせてくれないんだな。
前方に立ちはだかる相手を睨みつける。
先ほどからこの男から感じる殺気は尋常じゃない。
何が何でも、全力で俺の前に立ちはだかるつもりなんだろう。
その気迫で満ち満ちて、空気がピリピリと痛いほどに張り詰めている。
背を見せれば、その瞬間に背中ごとグッサリやられそうだ。
不利だろうと何だろうと、まずはこの相手を倒さない事には先に進めない。
やりたくなかろうが関係ない。
やるしかない…。
(……受けて立つしかない)
乗り気じゃないままに、しかし覚悟は決める。
「…だったら、こっちから攻めさせて貰うで」
不敵に告げてくる声。
考える間も迷う間も、与えてくれやしない。
相手はその声を合図に駆け出す。
前傾姿勢になって矢のように突進してくる。
俺はすかさず、その進路上から飛びのいた。

