「…………どういうことだよ?」
言いながら。
こめかみから汗が一筋流れていく。
なぜかとてつもない喪失感のようなものが怒濤のように胸に押し寄せてきた。
容赦なく押し寄せてくる。
自分を責めずにいられないような、そんな怒濤。
何か自分はとてつもない過ちを犯したんじゃないだろうか。
間違ったまま引き返せない場所に居るんじゃないだろうか。
取り戻せない何かを失くしてしまったのでは…
一人とりとめのない自問していると、奴はふぅーっと長々と白煙を吐き出した。
「ぶっ刺されたはずのお前が無事な理由は何か?
――それはそういう現実は無かったことにされたから」
煙の向こうの目は笑っていなかった。
「或いは、明月ちゃんがその現実を受け入れられなかった。耐えられへんかった…拒絶したからや」
「…………拒絶」
呆然と呟く。
その言葉がいやに重く心にのしかかった。
「そうや。拒絶したんや」
煙を見つめる目はどこか憂いげだった。
「明月ちゃんはお前が居なくなることに耐えられへんかった。
お前が明月ちゃんが居ないこの場所に耐えられへんかったように…」
ちくり、と痛みが走った。
その言葉ひとつひとつが胸に刺さるみたいに…。
「だから、そう強く望んだ方向へツキが働いた」
「………そんな」
「ほんまや。かつてないほどの大きな力がお前にか関わる全ての事象に作用した。
時間、空間、磁場…全ての位相に断裂が生じた。
あの時間の地点だけ現実は変えられたんや」
「………………」
俺は探るような目つきで、そいつを眺めた。

