振り返る。
壁の傍に立っているそいつに向き合う。
目が合った。
ヒタヒタと絶望のような暗闇が押し寄せてくるのを感じる。
なんでコイツがここにいる…?
なんで。
なんで……。
なんでアカツキが居なくて……。
おかしい。
なんでアカツキが居ないんだ。
アカツキが居なくて、そう気づいたら、コイツが現れて……。
アカツキ……。
思った途端に頭ん中が真っ白になった。
何かを考える間もない。
手が動いた。
反射的に。
掴み掛かっていた。
荒々しくそいつの胸倉を掴んで、乱暴にその後ろの壁に押し付けた。
ダンッッと背中と壁が衝突する音が響く。
だけど、どうなろうとも構わない。
その音さえも遠く意識の外へと過ぎ去っていく。
「てめっ、アカツキに何をしたっ」
自分でも信じられないぐらいに低くくぐもった声がその場に響いた。
制御できないぐらいに感情は昂ぶっていて、怒りでぎらぎらしていた。
なのに、奴を掴む手は震えていて。
一方、相手は冷めた目で俺を見ていた。
いつもとは違う…。冷気のような寒々した雰囲気を纏っていて。
「狂犬の眼ぇしてるで。お前」
落ち着いた様子で、俺の手を簡単に払いのけた。
興味深げに俺の顔を眺め、フっと口元だけを歪めて笑う。
「そうや…。そういえば初めて会った時もそういう眼をしとったな」
確かに。
こんなふうにして同じように掴み掛かった記憶は有る。
きっと友好的な出会いじゃなかった。
だけど、そんなことはどうだっていい。
過去のことなどいい。
問題は今。
今は。
「質問に答えろ」
低い声のまま促す。
「……なんでアカツキは居ないんだ」

