目頭が熱くなっていることに気づいた。
何故だか泣きそうになっていた。
泣きたくもないのに泣きそうになっていた。
喉の奥がつかえる。
思い出せなくて。
苦しい……。
すぐそこに見えているのに。
掴めない雲のようで。
熱い。
喉の奥、その胸の奥が焼け付くように熱い。
歪んだ視界がグルグルと回り出す。
周囲の風景も何もかもぐちゃぐちゃに混ざり合って。
椅子に座って居られないぐらいに目が眩みだす。
このままだと……壊れる。
思い出せないままに壊れてしまう。
何かを考える間もなく、バンッと机に両手をついた。
ガダンッッッ!!!
椅子を引っ繰り返すほどの勢いでその場に立ち上がった。
ザワリ。
瞬間、教室内が動揺に揺れた。
気の弱そうな古文担当の国語教師が「ひぎっ」と奇声を上げて、板書していたチョークをポッキリと折った。
「ど、どうしたんだ?守谷…」
ビクビクと体を縮こませながら尋ねてくる。
どうやら、この突発的な行動を反抗的態度と取られてしまったらしい。
視界の歪みは消えて、もとの景色が正常に見えた。
気持ち悪さはまだ腹の奥に沈んだまま。
気分を落ち着けるように、ふぅーっと長々と深い息を吐いて…吸って…。
「すみません。猛烈に腹痛がするんでちょっとトイレに行ってきます」
教室中の視線が突き刺さるなか、今しがた浮かんだばかりのテキトーな嘘をかました。
「そ、そうか」
いまだ少し怯えている教師は注意もせずに頷く。
俺は足早に席を離れ、教室の扉の方へ向かった。
周囲からの「早弁かよ」と言いたげな胡乱な目つきを感じ取ったけど、一向に構わずに外へと出た。

