(―――うーむ…)
一時間目、二時間目、三時間目…と時間だけは淡々と平和に過ぎていった。
しかし周りがどんなに平和だろうが、俺の心中は穏やかではなかった。
授業には全く集中できず、一人苦悶していた。
最初に感じていたぽっかり空いた穴は決して消えずに、むしろその穴はどんどんと広がり深さは増すばかりだ。
えぐられるような痛みさえ感じる。
この日常はおかしすぎる。
気分的な問題か、と思ったけど、どうやらそうではないらしい。
休み時間ごとには必ず白石さんが教室にわざわざ会いにきてくれた。
それをクラス中の男子どもが羨望と嫉妬のこもった眼差しで見てくる。
満更でもない気分。
サトシの言っていたとおり白石さんは俺なんかにゃ勿体無いぐらい可愛いし、多少強引なところもあるけど優しい。
一緒に喋ってるときも、すごく楽しそうに華のように笑うし。その笑顔がドキッとするぐらい可愛いらしい。
自分がこんな可愛い同級生と付き合ってるなんて信じられない。
サトシに『絶頂に幸せ』と言われて仕方ないのかもしれない。妬まれても仕方ない。
たとえ、なぜかその成り行きについて思い出せなくても、『一緒に居る』という事実は身に余るほど嬉しい。
なのに。
……何かが足りない。
根本的な何かが足りない。
いつだって自分のど真ん中に居たはずの…。
気持ちを掻き乱したり、振り回したり、嵐のような…。
とんでもない、手に負えないほどに激しくて…。
でも傍に居ることが当たり前で。
傍に居なきゃ……
「………っっ」
頭の中枢が、ずぎんと重く痛んだ。
胸が苦しい。
まるで自分の片腕を丸々もぎとられたかのような。
とても大切な何かを失くしてしまったかのような喪失感がさいなむ。
苦しい。
ぼやーっと眺めていた黒板の文字がグニャリと歪む。
くそ。思い出さなきゃいけないのに。
何で思い出せないんだ。
眉間の間を指で押さえる。
痛みは増すばかりだ。
心がみしりみしりと音をたてているような気がする。
今にも壊れてしまいそうなぐらいに。
不意に視界が滲んだ。

