「目覚めのキス♪これで目ぇ覚めたでしょ?」
「…………」
ドドッと顔面を巡る血の量が増す。
目が覚めたというより、頭の中はさらに果てしのない混乱の渦中へ。
眩暈に似たものを覚えて、よろり、とフラつきながら後ろへ後退した。
「……あれ?…シュン、大丈夫?」
「だ、だいじょーぶ」
こめかみを押さえながら、何とか精神を正常に戻そうと努力する。
「そう?なんか調子悪そうだけど?」
心配そうに白石さんはこちらを窺ってくる。
「いや。大丈夫。ちょっとこれは…その…精神的な問題だから…」
――嘘じゃない。
さっきから、全く理解が状況の展開に追いついていない。
「そう?…じゃあ早く着替えてこなくちゃ。遅れちゃうよ?」
Tシャツにジャージのズボン姿の俺を眺めて、やんわりとそうせかしてくる。
壁に掛けてる時計の差す時刻を見ると、確かにちょっと慌てなきゃヤバそう…。
まだ制服に着替えてないし。朝メシもないし。
「待ってて」と言いおいて、急いで奥に引っ込む。
自分の部屋へと戻って、ハンガーに引っ掛けてある制服のシャツに手を掛け…、
そして、その袖に腕を通しながら、ふと疑問に思う。
そういえば一緒に登校するのが至極当然のように白石さんがやって来たけど、果たして今までそうだったっけ?
考えてみたけれど、やっぱり、さっぱり分からない…。
着替え終えて、鞄を肩に担ぎ、そうして自室を出る前。
室内を見回して…。
ふと、何気に目についたものがあった。
部屋の奥の片隅。
壁に立てかけられてる、竹刀などを入れてあるっぽい細長い袋。
足を止め、しげしげとそれを眺めやる。
ナゼだかそこから目が離せない。
「早く行かなきゃ」と思ってるのに、足が動かない。
それ自体が妙にその存在を強調してる感じがして。

