「………」
俺は雅の様子を探るように見た。
けれど、彼女は終始淡々とした態度で何を思っているのか読めない。
「なんで、お前がそこまでするんや?」
「え?」
雅は不思議そうに俺を見た。
「水波家の為になんで、そこまでするんや?」
「それは私が水波家の当主だから…」
「違う。あんたはまだ14やろ。
こんなことじゃなくて、他にもっとやりたいことがたくさんあるちゃうんか」
「…あなたに言われたくないわ」
雅はふっと笑って言った。
それから遠くに視線をさ迷わせた。
「妹が居るの」
彼女はぽつりと呟いた。
「妹は私に能力がないことを隠すため、この家を出ていってしまった…。
でも私は妹にはいつか戻ってきてほしいと思っているの。
私とは双子で…分身のようなものだから」
「雅…」
なぜかその時だけ、雅が普通の女の子に見えた。
「もしも妹が戻ってきた時のため、この家を無くすわけにはいかないのよ」
彼女は自分に言い聞かせるように、強く、そう言い放った。
彼女のその時の表情がなぜかずっと俺の脳裏に焼き付いて離れなかった。
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俺は風魔というはぐれ者が集まる隠れ里に生まれた。
父も母のこともよく覚えていない。
でもなぜか人の殺しかただけは誰に教わったのか、覚えていた気がする。
そして、俺がまだ小さかった頃、その里は里内のたった一人の者によって滅ぼされた。俺はそこから命からがらたった一人逃げのびた。
そして逃げのびた先で、俺は瀬川組という小さな極道一家に拾われた。
そして今まで、海外に留学していた期間以外は、俺は普通の暮らしとは縁遠い暮らしをしてきた。
「闇から生まれ、闇の中で育った者、か…」
確かに、その通りだ。
俺は結局、闇の中から抜け出せないのかもしれない。

