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それからしばらくして、瀬川組は水波家の傘下に入った。
そして瀬川組組長の俺は、水波家の当主、水波雅(ミツハミヤビ)を護衛することになった。
すべては水波雅の思惑通りだ。
悔しいが、何もかも彼女の手玉に取られて、どうにもならなかった。
水波雅は占いを生業としているらしく、水波家にはよく政界の重鎮や上場企業のトップなどが出入りしていた。
そしてその数日後、もしくは数ヶ月後、彼らの廻りに何らかの大きな動きがあった。
それらは大抵、ニュースに取り上げられたり、新聞に載ったりするぐらいの事なので、雅が何を占ったのか分かってしまう。
そして、そのカラクリを俺は知っていた。
おもに政府や企業が国運を左右する重大な選択に迫られたとき、彼らは水波雅のもとを訪れる。
彼女はそれらを占い、答えを出す。
そして、その答え通りの結果を出すため、政府や企業の内部に入り込んでいる水波家傘下の構成員が動くわけである。
「インチキやな」
ある日、俺は雅にそう言ってやった。
「インチキでも何でもいいわ。
私には水波家の巫女として備わってなきゃいけない能力がない。
でもそれを欲する者達がいる。
だから、それにこたえなきゃいけない」
「そやけど、なんでそこまでして…」
「だったら逆に訊くけど。
あなたはどうしてこんな小娘の言いなりになっているの?」
「…それは……」
言い淀む。
そんな俺に代わって、彼女が言った。
「あなたには守らなきゃいけない組員達がいる。それは私も同じよ」
彼女は相変わらず、見た目に反した大人びた笑みを浮かべた。
「言ったでしょ?
あなたと私は似ている、って」
俺はそれに対し、何も言い返せなかった。

