偉そうにそう言うその水波雅とやらを、俺は思いっきり睨んだ。
もはや相手が子供だろうと関係ない。
「なんでお前の護衛をせなあかんねん。
俺はユニバーサル銀行に入社する。それだけや」
「残念ね。
ユニバーサル銀行の役員のほとんどは、水波家傘下の者で構成されているの。
すでに、あなたは私の掌の上。瀬川組も水波家の傘下に入ってもらうわ」
「何言ってん…」
その時、スーツの内ポケットで携帯が震えた。
組員の山内からだった。
「若!大変です!
家の周りが何者かに包囲されて、身動きとれまへん!」
俺は携帯を潰さんばかりに握りしめ、向かいに泰然と座る水波雅を睨み付けた。
「お前…」
「海外に留学して、一流企業に就職して、真っ当な人生を歩むつもりだった?」
ゆったりした口調で問いかける彼女の目は、底知れぬ闇を湛えていた。
そこで、やっと気づいた。
目の前の少女は彼女自身の言う通り、無力な小娘ではない、と。
「残念ながらそれは無理よ。
あなたは籠の中の鳥。
闇から生まれ、闇の中で育った者は、いくら外の世界を知ったところで、光の中を羽ばたくことはできない」
彼女は笑った。
その笑顔はなぜか寂しげだった。
「あなたと私は似た者同士ね」
「………」
彼女は立ち上がり、俺に向かって手を差しのべてきた。
「これから、よろしく」
けれど、俺はその手を掴むことなく、ただただ相手を凝視していた。

