ドンッとすごい勢いで白石さんに突き飛ばされた俺は、床の上を派手に転がった。
何が何だか全く訳が分からない。
それでもすぐさま体を起こし、顔を上げる。
「白石さんっ!」
大声で呼びかける。
視線の先に居る、白石さんはあからさまに何かに怯えているようだった。
周りには俺達以外に誰も人は居ないし、差し迫る脅威は何も見当たらないというのに。
一体、どうして――…。
訝しく思いながらも、立ち上がり、彼女のほうに駆け寄っていく。
そんなこちらを目にして、
「駄目っ、シュン、駄目!来ちゃ…」
白石さんは震えながら後ずさる。
「逃げて!早く!逃げて!」
俺を見て、わめくように叫ぶ。
「何言ってんだよ、白石さん…」
と言いかけて、ハッと言葉を呑んだ。
見ると、白石さんはその目からボロボロと大粒の涙をこぼしていた。
「…逃げて」
泣きながら懇願するように言ってくる。
「……逃げて……私…私じゃなくなっちゃう……」
言葉に勢いが無くなっていく。
しだいに途切れ途切れになっていく。
「私……シュンを…傷付けたくない…」
「白石さん…」
「……シュンのこと……好き、なのに…」
ふらり、と白石さんの体が力無く傾いた。
慌てて、それを支えるべく手を伸ばす。
差し伸べた腕の中にその体が倒れてくる。
そしてそれを抱き止め……、
ドスッ
自分の身の内から、そんな鈍い音が唐突に響いた。

