白石さんは目を伏せた。
長い睫毛がその白い肌に影を落とした。
俺は最初に白石さんに会った時のことを思い出していた。
そういえば最初、白石さんはアカツキを見ていた。
彼女はどんな想いで俺達を見ていたのか…。
あの時の俺は何も知らなかった。
「私は月村さんのこと、心のどこかで妬んでいたのかもしれない。
姉さんが持ち得なかったものを、彼女が持っていたから…。姉さんがそれを持っていたなら姉さんが死ぬことはなかったのに…」
いつか感じた、彼女の心の闇の正体を知った気がした。
そして、その闇は…あまりに、深い…。
「だから…。
月村さんからシュンを奪ってやろうと。
私のシュンに対する『好き』はそこから来ているのかもしれない。
その可能性を…否定できない」
「白石さん…」
どうして、そんな隠しておきたいような部分を俺に明かすのか…。
そんな俺の疑問に気付いたように、白石さんは微かにほほえんだ。
「言っておきたかったの。
私の弱いところもすべて。
シュンに知って欲しかったから…。
私が私であるうちに…」
「――え?」
そのとき――。
突然、違和感のかたまりが風を切り裂いて駆け抜けた。
ビクンッ。
音を立てるほどの勢いで、その目の前の白石さんの顔が凍りつくように固まる。
何かによって無理やり”そう”させられたような不自然な唐突さ。
息も、まばたきも、指の先から足の先の動きも、その全てを止めて。
一瞬前までのあの、笑ったり、悲しんだり、辛そうだったりする、豊かな表情や言葉が嘘のように。
視線を一点に固定したまま動かない…。
その相手に、
「……白石さん?」
背筋に薄ら寒いものを覚えながら、恐る恐る訊ねた。

