「シュン…」
「どうした?」
「屋上に行きたい」
このわがままお嬢様はまだそんなことをおっしゃる。
「だめです」
ここは断固としてそう言っておく。
「これ以上、風邪が悪化したらどうするん…」
言葉の途中で、白石さんが俺の手を掴んできた。
「話しておきたいことがあるの。誰にも聞かれたくない、大事な話…」
「また別の日にしないか?」
「駄目。今じゃないと…」
彼女は懇願の眼差しに俺を見上げてきた。
その必死な目に、俺は胸を突かれた。
なぜそんな目をするのか分からないけど、今、彼女の話を聞いてあげないといけないという気に駆られてしまう。
「分かった」
俺は仕方なく頷いた。
すると、白石さんはほっとした顔を見せた。
「ありがとう」
そうして俺達は食堂を後にした。
その後、白石さんの要望通り、屋上へと向かった。
「……あれ?屋上って立ち入り禁止になってなかったっけ」
「知らないの?もうとっくに修理が終わって元通り開放されてるんだよ」
……そうなんだ。
扉がぶっ壊れてたり、給水塔に穴があいたり…ちょっとありえないぐらいに滅茶苦茶になってたのにな。
誰のせいかは言わずもがな。
真新しくなった、屋上へと続く鉄扉が目の前に聳え立っていた。
白石さんがそのノブに手を掛け、押すように一気に開け放った。
目の前に一気に光が溢れる。
眩しさに目を細めたが一瞬、すぐにその明るさに目が慣れた。
日はまだ頂上へ向かう途中。
周りに広がるは、少しくすんだ色の空。
その空を背に立って、白石さんはこちらを見ている。
その時、ぶわっと一際強い風が吹き抜けていった。
「きゃっ」
慌てた様子で白石さんは膝上丈のスカートが手で押さえるものの、
間に合わず、風に煽られ、翻り、捲りあがった。

