嫌の予感というのは大抵的中してしまう。
「この家の傍に詰所が併設されていてね、24時間体勢で常時SPが控えてるの。
私が呼び出せば、すぐに現れるわ」
「マジかよ」
一体どこの御要人気取りだ。
「本当よ。私の命令に忠実に動いてくれるわ」
楽しげに目を細めながら言ってくる。
「そうねぇ。たとえば何でも出来るわよ。
貴方をここで拉致監禁して、月村さんを釣り出してみようかしら。
それとも貴方を脅迫して、月村さんを呼び出して貰おうかしら」
…どちらにせよ、それって犯罪じゃないですか?
もはや奴の考え自体が正気じゃない。
勝負師じゃなくて、本当は完全犯罪者じゃないのか?!
とんでもない奴に捕まってしまったようだ。
思わず天を仰ぎたくなった。
…その時、
勢い良く部屋の扉が開け放たれた。
何と、その突然の来訪者は誰かといえば…
アカツキだった。
「――随分と私をお呼びのようだな」
仁王立ちしたまま俺達を見据えている。
「あら、ちょうど良かった。
呼び出す手間が省けたわ」
一方の白石さんの反応は落ち着いたものだった。
ふてぶてしい態度の不法侵入者に対して怒るでも驚くでもなく。
俺だけが脳内混乱中。
それでも何とか状況を把握しようと…
「お前、どうしてここに…」
尋ねようとした途端にいきなり顔面に何かを投げつけられた。
暗転。
背中から床に倒れ込む。
顔がじんじんする。
どうやら投げつけられたのは、学校に置いてきた筈の俺の鞄。
「忘れもんだ」
遠くでアカツキの声。
投げる前に言ってくれ。
「よくこの家のセキュリティをかいくぐって来れたわね」
白石さんは感心するように言う。
「そうか?別に普通に来れたぞ?」
アカツキはしれっと答える。
どうやらここでも奴の強運が発揮されたようだっだ。
その強運の前では、あれだけ厳重なセキュリティでさえ屈してしまうらしい。
無敵すぎる。

