「……あの、大丈夫…うわ?」
と思ったら、広げてきた腕をそのままに抱きついてきた。がばっと。
そして猫のように頬を摺り寄せてくる。
「……白石さんっっ」
めちゃくちゃに焦る。
慌てて引き剥がしに掛かるが、さらにぎゅうぅっと力を込めて抱きついてくる。
その体は熱っぽくて熱いのに、腕の力だけは妙に強い。
「シュン好き!好き!大好き!エル・オー・ブイ・イー、らびゅーッッ!!」
暴走は止まらない。
「わーっわ分かったから離れてーっ」
そのしがみついてくる熱い体を全力で引き剥がす。
こんなところを誰かに見られたらエライことだ。
慌てて素早く周囲を確認すると、話し声や水しぶきの音のほうがうるさく、誰もこちらには気を払ってなかった。ほっとした。
ふと横を見ると、体育教師が「あとは頼む」と言わんばかりの情けない顔で手を合わせてきた。
「はぁ…」
さすがに要望どおりのおんぶや抱っこはしなかったが、肩を貸し、寄り添う形で彼女をその場から連れ出し歩き始めた。
そのまま真っ直ぐに保健室のある校舎へと向かおうとし…
「そっちはイヤ。行きたいとこがあるの」
と白石さんが頑なな口調で行き先を制した。
「えっ?保健室に行くんじゃ…」
すると白石さんは悪戯っぽい笑みを浮かべ、
「カフェテリアに行きたいの」
「………は?」
「体が熱いからソフトクリーム食べたぁい」
子供のようなわがままをおっしゃる。
「いや、でも、風邪引いてるんだし…」
と言いかけたところ、彼女は上目遣いに俺を見上げてきた。
「ダメ?」
「…いや。ダメってことは無いんだけど」
「じゃあ、行こっ」
絡ませた腕を引いてきて、主導権を呆気なく彼女にとられる。
ここは強く「ダメ」って言うべきだったかな。
どうやら風邪を引いても強引なところは変わらないらしい。

