その言葉に、冴月は、その瞳の金色を、ふいに翳らせ、ぽつりと呟いた。
「私の見える先なんて、たかがしれている…」
冴月はその目を遠くに向けた。
”千里眼”
先見の眼とも言われるその眼には、様々な異能力の種類がある。
遠方の出来事を見通す眼。
将来のことを見通す眼。
隠れているものなどを見通す眼。
その中で、冴月は――。
「私のは、視えてせいぜいゼロコンマ何秒先の未来だけ」
その眼に宿る金色をわずかにさざめかせて話す。
「私の生まれ育った隠れ里は外部の者と交わるうちに遠の昔にその力を途絶えさせた。だから私のは”先祖返り”で偶然宿っただけの力。本来の千里眼とは程遠い…」
「………」
「もし全てを見通せていたら、蘇芳様や…あそこに住んでいた者…すべてを守れたかもしれない、がな」
言って、寂しげな笑みを浮かべる。
そんな冴月に対し、紅羽は問いかける。
「お前はなぜ、自分の子ではない俊を育て、守るんだ?」
すると、冴月はフとその雪のように白い面を揺らめかせた。
雲に翳る空のように、うっすら影をしのばせて。
「それが蘇芳様からの最後の御命令だったから」
そうはっきり言い放つ冴月に、紅羽がさらに問いかける。
「その主はもう居ないのに、その命令を守り続けるのか?」
「そうだ」
冴月はしっかりと頷いた。
「逆に問う。
紅羽様はなぜ、生まれてすぐの俊を手放した?」

