「しぶとく武器を手放さなかったのが貴様の敗因だ」
聞こえよがしに言ってみせる。
そして、やがて晴れていく煙の中へと踏み込んでいく。
そこには、黒い影がやはり、あった。動かずに。
倒れずに立ったまま居るのか……。
「どこまでもしぶといな」
だが、深手の傷を負って動けないのだろう…。
そう確信し、煙を払いのける。
ついにその敗者の姿があらわに……
「……ッッ」
紅羽は愕然と目を見張った。
そこには――。
鎌の突き刺さった大きなゴミ袋が在るのみだった。
確信していた勝利を粉々に打ち砕かれた雅は、それでもとっさに周囲を見回そうとした。
だがそんな暇も無かった…。
ただ…
視界の端に白銀の髪が翻るのを捉えた。
「……うぐぅぅっ」
次の瞬間にはもう、冷たい金属の感触が首に食い込んでいた。
先ほどまで自分が操っていたはずの鎖が……
「……私に不意打ちは効かない」
そのすぐ真後ろから声が凍てつくような声がした。まるで自分の頭蓋から響いたような錯覚にさえ陥る。
冴月は、紅羽が刀に絡めた鎖を使って、ぎりぎりと紅羽の首を締め上げていた。
多分、武器を手放さなかったのも、このせい…。
紅羽は呪いたい気分になった。
他人の姿に化け、不意を打ったつもりが完全に不意で返された。
「……千里眼、か」
苦しげな息のもと、紅羽は呟く。
冴月は、その金色の瞳を夜行性の獣のように冴え冴えと光らせていた。
「……すべて…お見通しだった、ってわけか」
紅羽は自嘲げに顔を歪めた。

