「その勝負とやらに勝つために、アカツキの強運を利用したいというのも本当なのか?」
「そうよ」
当たり前のように頷いてくる。
まるで平気だ。あんな凶暴女を利用しようと企む奴が居たなんて末恐ろしい。
しかし、ここは一言ガツンと言ってやらねばならないようだ。
「勝てる勝負に勝つってのが勝負師という奴じゃないのか?
運に頼るって地点で負けを認めたも同然だろ」
「…なかなか言うわね。
でも勝利を引きずり出すのも勝負の一環よ」
さすが力づくの自論をお持ちのようだ。
だけど、こっちにも譲ることが出来ない一分がある。
「そうかい。
だが、そんな勝手な都合でアカツキを利用される訳にはいかないな」
と強気に言ってみても、危うくコイツの策にハマるところだったが。
いやハマっていたのか。
「あら、どうして?
そういえば、ずっと月村さんと一緒に居るようだけど恋人同士なの?」
いきなりとんでもない事を訊いてきやがった。
何でもない表情でいるつもりが、つい動揺を見せてしまった。
「…へぇ、そうなんだ」
腹黒女が意味ありげな笑みを浮かべる。
その笑みがサトシのそれとカブって見えた。
「…ちょっ!違うに決まってんだろ。何言ってんだ」
勘違いされてはかなわないと、慌てて否定した。
「ふぅん。まぁいいわ」
彼女は笑みを浮かべたまま言った。
「どちらにせよ利用させて貰う」
「…はっ。ムリに決まってんだろ。
当の本人が承諾してないのに」
アカツキは絶対に自分の意志を曲げないタイプだ。
「断る」と最初に断言したからには絶対に承諾しない。鉄の女だ。
しかし俺の嘲りはすぐに遮られた。
「どうして私が貴方をこの家に連れてきたか分かるかしら?」
「何…」
と言いかけて、冷たい予感が背中を通り過ぎた。

