「邪魔などするつもりありませんよ」
冴月は両手に持っていたゴミ袋をその場に下ろした。
スッと、その手を後ろへ回す。
うなじの下、制服の襟の下からするり、と一振りの得物を取り出した。
「――ここいらでいったん、決着をつけませんか?」
「…なるほど」
小太刀を正眼に構える冴月を見据え、雅は笑った。
「そういえば前に、本気での勝負をしようという約束をしていたな」
言うやいなや、見る見るその相貌が変化した。
怜悧な美貌から、丸みのある顔立ちへと。
漆黒の長い髪から、赤みを帯びた柔らかな癖毛の髪へと。
「紅羽(クレハ)様…」
その姿を見て、冴月はその名を呟いた。
「それなら、私も本気でこたえよう」
雅――もとい紅羽はそう告げ、スカートの下から無造作に何かを引っ張り出した。
ジャラジャラジャラ、と耳障りな金属の擦れ合う音が響く。
もはや彼女にとって相棒ともいえる武器。
その馴染んだ感触を確かめるように、鎌の柄を手の内で回し、持ち直す。
赤みがかった瞳が冴月を見下ろし、
「昔から、貴様が目障りだった。
いつも蘇芳様に目をかけられて。大切にされて…」
感情的に言い放つ。
「だから、風鬼の言葉に耳を貸したと言うの?」
「そうだ!!」
そう叫ぶや、もう片方の手で鎖を手繰り、
ジャララララ…。
いきなりに、その先の分銅の鉄丸を冴月のほうへ投げつけた。
「お前が雨宮家に現れてから、あそこに私の居場所はないような気がした。
そんなときに風鬼に声をかけられた。『私達の子孫を残さないか』と。
人の子を宿せない私の体でも、アヤカシの子なら宿せると知ったんだ!」
冴月は階段の縁を蹴って、飛び退り、軽々と身をかわす。
その逃げる先へ、
紅羽は黒く丸い物体を続けざまに投げつけた。

