「何っ?!」
蓮は眉尻を上げ、一気に雅に詰め寄った。
「どういうことや?」
その襟首を掴み、問いただす。
それでも雅は動じることなく、余裕綽々とした笑みを浮かべてこう答えた。
「種はすでに巻いてある。
あとは花開くのを待つだけ」
「……花、だと?!」
相手を射殺さんばかりの剣幕に、雅は「そうだ」と楽しげに頷いた。
「――この世界を壊し、私と風鬼だけの世界を作る」
「そうはさせないよ」
突然、そんな声が響いた。
雅と蓮は同時に声の聞こえた方を振り返った。
そこには憤然とした面持ちの女子がこちらを睨んでいた。
その両手には大きなゴミ袋が二つ提げられていた。
いかにも今しがた掃除を終えて通り掛かった、と言わんばかりの風情。
背格好は標準。
けれど唯一目立つのはセミロングの黒髪に一筋だけ入ってる金のメッシュ。
「冴月」
その姿を目にした途端、雅の目の色が変わった。
その眼差しが、強い憎しみの色に変わる。
蓮も驚いたように、突然登場した相手を見ている。
「あんたは…」
「名乗らなくても私のことは知っているんでしょう?」
そう言うと同時に、彼女の髪色が黒から煌めく白銀へと変化した。
「この場は私が引き受けます」
冴月は一歩一歩と雅の方に近づきながら、蓮に告げた。
「あなたは早くシュン達を探して…」
と云い終わるや否やのタイミングで、蓮はダァーッと猛ダッシュで冴月の脇を駆け抜けていった。
「…はや」
短く冴月が突っ込んだところで。
「貴様…」
雅が低く唸る。
蓮が走り去るのを止められなかったのは、ひとえにこの眼前の相手に背を見せるわけにはいかなかったから。
「また私の邪魔をするか…」

