「参ったなぁ」
焦るように奴は言う。
だが決して焦ってなどいない。口調に余裕が漂っている。
「いっちょ、ここで睨めっこでもすっか」
まったくもって阿呆な提案をしてきた。
「小学生かよ」
「おもろい顔したらお前勝つと思うで。俺そーいうの弱いから」
「知るか馬鹿」
そもそも何の勝負だ、それは。
なんだか力が抜けていきそうになる。
そっちから勝負を仕掛けてきたくせに。やる気あんのか、こいつは。
しかし油断はいけない。
こうやって喋って、話の方に気をそらさせようとしてるのかもしれない。
だが、そんな手には断じて引っ掛らな…
「なぁ。そういえば気になってたことがあったんやけど」
「……あんだよ?」
苛々としつつ訊ねる。
机の上での力は拮抗したまま――。
相手は変わらず楽しげな声色で、
「学祭ん時、アカツキちゃんとチューでもした?」
「………………なっ」
そのたった一言で全てがぶっ飛んだ。
頭が真っ白、白紙になる。
(……なんちゅーことを訊いてきやがん…)
そしてその致命的な隙に、奴の目がギランと鋭く輝いた。
「隙ありゃぁあああ!!」
今まで溜めに溜めてた力を放出するように、腕を一気に押してきた。
こちらはそれを防ぐどころか、反応することさえ出来なかった。
コテン、と。
呆気なく勝負はついた。

