「そこまでして何がしたいんだ?
どーせ勝負がどうのとかいうのも嘘なんだろ」
「それは本当よ」
あっさりと頷かれた。
これは予想外だった。
「私が勝負師だということ、
どうしても勝ちたい勝負があるということ、
その部分は本当よ」
「今更、そんな事を俺が信じると思うか?」
数時間前までは信じてたけどな。
「貴方が信じようが信じまいが関係ないわ。
私はどうしても勝たなきゃいけないの。あの勝負に」
「賭博で、か?」
俺は半眼で相手を見た。
「そうよ」
気づけばその相手の目の色も変わっていた。
「…敵は私と同年代で同じく実業家の娘。
おまけにスタイル抜群の美人ときたもんだわ。
けれど美少女勝負師の称号は私だけのものよ。
何が何でも譲らない!」
興奮気味に拳を握り締め、そう云った。
何かどんどんキャラが変わっていくよな、この人。
そこでふと、サトシが補足的に付け足した説明を思い出した。
『何でも白石さんのご両親は一代で富を気づきあげた敏腕起業家らしいな。
悪い言い方をすれば成り金だ。
彼女にもその血が脈々と受け継がれているのか、成り上がり根性が凄まじいらしい。
絶対に敵には回したくないタイプだな』
そういえばこの豪邸もヨーロッパの中世を意識した造りになっているが、かなり新しい感じがする。
なるほど成り上がり…ね。
白石さんも筋金入りの負けず嫌いという訳か。
その彼女が熱く弁を振るう。
「次の勝負は賭博界の世紀の一戦になること間違いなしだわ」
まだ21世紀は始まったばかりなんだけどな、と心の中で突っ込んでおいた。

