まるで蝿叩きを振るうかのような素早さ。
見ると、サトシは鼻面を押さえて悶絶している。
こいつも本当に学習しないな…。
「ウゼェ」
そしてこいつも本当に容赦ない。
突き出した腕を戻し、奴にくれてやるのは冷めた一瞥のみ。
後は無視して、学校の門をくぐる。
その後姿を見送りながら、サトシはよろよろと立ち上がり、
「なるほど。こうやって障害を乗り越えてこそ愛は深まるのだな、シュン」
鼻血を滲ませながら言う。
俺の頬に残る型を見つめているらしい。
「…お前、ホントに馬鹿だな」
溜息を吐きながら、歩き出す。
面倒にも、後ろから奴がもれなくついてくる。
「しかしだなシュン。せっかく一緒に登校するなら手ぇぐらい繋がねーと」
「するか、馬鹿」
にべもなく突き放す。
「えー。でも手を繋いでるところを見たことあるって誰かが言ってたぞ」
にまにまとした声が飛んでくる。
ぎくりと肩が跳ねた。
「…デマだろ」
平静を装いながら昇降口に向う。
「へぇ?」
からかうような口調が追いかけてくる。
「………」
くそぅ。感情が顔に表れてしまう自分がいまいましい。
後はシカトし続けるしかないな。
ずんずんと下駄箱に向っていき、サトシを距離をとる。
そそくさと靴を履き替えながら、ふと思う。
(そういえば手なんて繋いだことなんてあったっけ)
何となくあった気もするけれど、よく思い出せなかった。

