Fortunate Link―ツキの守り手―



――…嗚呼。

何ということだ…。


俺は心の中で呻いていた。

目の前で、揺るがない現実を見せ付けられていた。



正直、本人の口から真実を知らされてもまだ信じたくない、と思っていたのかもしれない。

男と言うのは往々にしてそんなものだ。
未練がましいうえに、往生際が悪い。
どうにもスパッと脳みそが切り替えられない生き物なのだ。


前方には、俺を見下ろすようにそそりたつ鋼製の門。
その門の両脇にはおどろおどろしいモニュメントが乗っかっている。
何ていったっけ?ゲームにも出てきた…
…ガーゴイル?

まるで来る者を威圧してるみたいだ。


「ここが私の家よ」

隣の白石さんが云う。

いや、それは分かるけどね。
「白石」っていうデカイ表札立ってるし。

白石さんが門に向かって一歩踏み出すと、
門はひとりでに開いた。

一体どういう仕組みになってんだろ?


俺は敷地内に入って行く白石さんの後に続いた。


門から入り口までがまた遠い。

その途中で何個も監視カメラが作動していて
見張られている感がすごくあった。

エントランスの床は全面大理石。

間違いない。
本物のブルジョワだ。

獅子をあしらったドアノブがついた木製のいかめしい扉を抜け、
邸宅内部へと案内される。

天井の高さと柱の太さに呆気に取られた。

長い廊下を抜け、広い部屋へと連れて来られた。

客間の一つっていうところだろうか。

それにしても人気が無い。
広い空間がガランとしたものに感じられる。


「誰も居ないんだな…」

こんだけ広けりゃ、裏でハウスキーパーが何人か控えてるのかもしれないけど。

「そうね。
両親ともに仕事行ってるしね。

ゆっくり寛いでちょうだい」


「あの…妹さんは?」

確か、来年私学の高校を目指すと言っていた双子の…

「妹なんて元から居ないわ。
私一人っ子なの」

平然とした顔で言いおった。