「もう10年も前の話だ」
目を伏せて、アカツキは話し始めた。
「でも夢で見るたびにありありと思い出す」
ベッドの上へと視線を滑らせる。
「あの日、私は誰か分からない大勢の人間に追われて、必死で自分の家に逃げ帰った」
「………」
とくり、と心臓が跳ねた。
俺の知らないアカツキの過去…。
「家に着いて、母さんにそれを伝えると、母さんは私にクローゼットの中に隠れていなさい、と言った。
私は母さんの言う通りにした」
「…………」
聞いていていたたまれない気持ちになった。
話していくにつれ、アカツキの顔はだんだんと色を失っていく。
どうしてそこまで無理をして、今、話そうとする?
「しばらくして、家に人が押し入ってきた。母さんはその人達に殺された。私はクローゼットの扉の隙間からその様子を見てたけど、怖くて出ていくことが出来なかった…。
人が出ていった後、私は怖くなって母さんを置き去りにして家からいったん逃げた。そしてもう一度家に戻ってきた時、母さんが消えていた。全てがなかったことになっていた。親戚に聞いても母さんは借金苦になって行方不明になってるだけって言う」
そこまで一息に言って、アカツキは息を吐いた。
「もしかして、あのときのことは夢だったんじゃないかって思う時もある。
でもきっとそれは違う。
襲ってきた奴達に全てを揉み消されただけだ…。
私は全てを見ていた。
襲ってきた奴達が何者かは分からない。
でも奴達は私を狙っていた。
母さんはきっと私のせいで殺されたんだ。
私が、母さんに助けを求めたから」
淡々としていた口調が崩れていく。
その言葉が胸に迫るようで苦しい。
「私が助けて、と思わなければ、母さんは死ぬことなかったかもしれない。すべて私のせいだ。私のせいで…」
一気にまくし立てるように言った。
自分を責めたてるように。
臨界まで来た感情が溢れ出しそうになっているみたいだった。
「……アカツキ」
見ていられなかった。
何て言葉を掛けてやればいいのか分からない。
だけど……、
「落ち着けよ。お前のせいなわけないだろ」

